村ができるまで
2016年9月X日 クドイ樹海 ダークオーク林 reyseven_VH4の手記
その日、遠征に出た私は、黒い木が茂る不気味な森に迷い込み、抜け出せぬまま日が落ちてしまった。
魔物に追われ、小さな湖に面した木に登り難を逃れるも、身動きすらままならない。夜は長い。深い森で私は前後不覚に陥っていた。雪山の風下に位置するこの森では、9月と言えど夜は寒さがこの身を刺す。祈りを込めて空を見上げるも、今日は星が一つも出ていない。
恐怖に駆られるまま、私は通信による救援要請を送信した。
「見知らぬ森で迷った。身動きができない。助けてくれ。」
返答はない。
暫くしてもう一度送った。
「敵に囲まれている。凍えそうだ。助けてくれ、頼む。」
『了解、すぐに向かう。』
遂に返答があった。
私は来るべき開放を喜んだ。
が...そうは甘くないようだ。
黒き森は影を生み、影は魔物を次々に呼び醒ます。
救助を待つ間にも膨れ上がる闇の軍勢。
四面楚歌。絶体絶命。孤立無援。
終わりだ、もう遅かったんだ。私の全てがそう悟った
その刹那──
空を裂く一撃が闇を穿つ。
「悪路で救援が遅れてすまない。無事かね?」
振り返るとそこには一人、軍服の男。
名は、"AdmiralSky"。彼は提督と呼ぶようにと言った。
「助かった。私はどうすればいい?」
「朝までしのぐ。」
一振りの剣が投げられ、目の前の黒い木の葉が積る地面にまっすぐ突き刺さった。
やれやれ、結局やるしかないようだ。
苦笑いしながら剣を取るが、心持ちは先ほどとは全く違う。
「背中は任せたぞ、rey。」
「応。」
霧の漂う黒い森の湖畔に鳥の声が木霊する。
戦いの果てに遂に夜は明けた。
「ご苦労だった。さて、そろそろだろうか?」
提督はよくわからないことを口にする。
私は疲弊しきり、黙ってぼんやりとかすむ湖の対岸を見ていた。
おや?霧がゆらぐ。
疲れのせいかと思ったが目を凝らすと、
蹄鉄の音と共に、2つの人影がこちらに向かってきていた。
「我々も救援に来たよ。これを食べるといい。」
名はALU28とnd_chobin。
彼らが持ってきたカゴ一杯のパンとサバイバル道具を分け合った。
3人は私の仮拠点作りのサポートをしてくれたが、
提督とALUは此処を別荘とするのも一興だと言い、
気づくと私の仮拠点とは別に2つの家が建っていた。
「上等だ、この際村にしてしまおうか。」
提督が軽口を叩く。
なるほど、村か。
かねてから村を興したいと思っていた私はつい─
「村、作ろう。」
冗談へ真面目な顔で答えてしまった。
驚いた顔をした提督とALUだったが、すぐに賛同は得られた。
「では、村名はどうしようか?」
「ダークオークの森を切り開いたんだ。"黒森村"でどうだろう?」
「よし提督、それでいこう。」
かくして、此処に"黒森村"は誕生した。